日本人は『マーク』が好き?

今年の4月から一定の条件を満たした食品に、『健康マーク』が表示できるようになります。(参照:『日本人の長寿を支える「健康な食事」の基準とマーク』/厚生労働省)

これを定めた厚生労働省によると、『健康マーク』の目的は、「健康寿命の延伸に向けて、その基盤となる健康な食事について、どのようなものかを示し、多くの方々に広く認識してもらうこと」だそうです。

食事の内容によって健康状態が左右されるのはもちろんのこと、肌トラブル改善にも深いかかわりがあります。ですから、これだけ聞くと、私たちにとって役立つ情報のように思いますが、異論も多く出ています。

それというのも、実は・・・。

『健康マーク』ってなに?

簡単に言うと、厚生労働省が、国民の健康を願って、健康な食事の条件をクリアした食品を一目で分かるようにしたものです。

健康な食事の条件は、『栄養バランス』と『カロリー』のみに着目されているとのこと。今のところ、食品添加物など、ほかの要素は関係なし。

さらに、『健康マーク』の条件をクリアしているかどうかの調査機関はなく、あくまで自己申告

単純に、「これって何の意味があるのかな?」と、疑問が湧きませんか?

(参照:『「健康な食事」の基準と、その普及のためのマークの策定/厚生労働省)』

『健康マーク』の疑問点

まず、健康な食事の条件は、栄養バランスとカロリーだけで計れるものなのでしょうか?

重箱の隅を突くわけでないのですが・・・健康な食事とは、個々の体質や生活習慣によって変わるはずです。あたかも、『健康マーク』の食品を食べていれば、すべての人が健康を維持できるような誤解を与える恐れがあると思います。

また、『健康マーク』が貼っていない食品は、貼っているものに比べて健康維持できないイメージを与えます。大した根拠を持っていないにもかかわらず、『健康マーク』から受ける良いイメージが大きすぎることは問題だと思います。

次に、ここが本当に理解不可能なのですが、『健康マーク』の定める条件をクリアしたかどうかは、自己申告だということ。どこも、誰も、チェックしない。うがった見方をすれば、栄養バランスやカロリーを無視して作ったものでも、勝手に『健康マーク』を表示できることになります。だって、誰にも「間違ってるよ」と、指摘されないのですから。

このように、どう考えてもお粗末な制度で、『健康マーク』には何の価値もないように思えてなりません。なぜ、国の機関である厚労省が税金を使って、こんな仕事をしているのか、不思議です。

なぜ、日本人は『マーク』が好きなのか?

なぜか、マーク付きの商品は、マーク無しの同じような商品に比べると、よく売れます。これは日本人が権威に弱いからでしょう。

化粧品業界に限って言うなら、有名大学の教授や医師の言葉を無条件で信じる人が多いです。特に、自分の知識が乏しい部分は、なおさらこの傾向が強くなります。だから、化粧品メーカーは、ドクターズコスメのような皮膚科の医師とコラボした化粧品を開発したり、有名大学の教授の顔写真をパンフレットに載せて、お墨付きをもらいます。

こうすることで、「こんなにすごい人が関わっているのだから、良い化粧品のはずだ!」と思わせる訳です。でも、実際は、教授や医師と協力して作った化粧品だからと言って、そのほかの化粧品に比べて、特別優れている訳ではありません。なぜなら、彼ら彼女らは、化粧品開発については素人だからです。

専門分野の知識は、確かに豊富に持ち合わせているでしょう。でも、その知識で化粧品を作ることはできません。医学と化学は違います。もし、教授や医師に、その技術があれば、化粧品開発会社に就職して活躍していることでしょう。ですから、大半の人は、あくまでも名前を貸しているだけなのです。

私が過去にOEMを請け負っていた時代に、『権威のお墨付きをもらう』が流行り出しました。ですから、自ら売り込みにくる、バイト感覚で名前を貸す人たちを多く見てきました。もちろん名前を出している人全員がそうではないと思いますが、写真とコメントだけで、ウン十万~ウン百万を受け取る姿は、気持ちの良いものではありませんでした。

他にも、オーガニックマークも同じですね。世界には、オーガニックマークが数十種類あります。それぞれ条件が異なり、画一的なオーガニック制度というのはありません。そもそもオーガニック化粧品だからといって、安全なわけでもありません。しかし、「普通の化粧品よりも、安全性が高い」と信じているかたは大勢います。

良く見かけるモンドセレクションもそうです。モンドセレクションの金賞は、ある手段を使えば、割と簡単に取ることができます。逆に、その手段を用いても賞が取れないところって、どんな商品を作っているんだろうと疑問に思います。普通に作っていれば、簡単に基準をクリアできますからね。たぶん、世の中に出回っている商品のほとんどは、モンドセレクション金賞を受賞できると思います。

このように、『すごそうに見えて、中身は普通』が世の中に溢れています。こういったマークに期待をせず、「普通の商品」と思って買っていれば問題ありませんが、多くの人は過度な効果を期待しているのではないでしょうか?

確かに、マークだけで判断できることは、選択の際に楽チンなのですが、知らないところで普通のものに高いお金を使っていたり、効果のないものをひたすら使い続けたりすることになります。

だから、このようなマーク(権威づけ)を見かけたら、素直に信じるのではなく、ちょっと斜め45度ぐらいから見ておいて、ちょうどよいと思います。

あと、ちょっとでも不審に思ったことは調べましょう。せっかく、インターネットがここまで普及して、以前に比べると、どんなことでも簡単に調べられるようになりました。こんな便利な道具は使わないともったいないですから。

投稿日:2015.02.08

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アースケア代表・化粧品開発者

井上龍弥

2000年アースケアを創業。保湿に特化したアクシリオの開発・販売を手掛ける。起業家ならではの人生観や自身の超がつく敏感肌・乾燥肌の経験談が愛用者に人気。

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