ある日の私と妻の会話
妻 「今日、百貨店の化粧品売り場で、意味の分からんこと言われたよ~。」
私 「へ~、何て言われたん?」
妻 「美容液を売り込まれたんだけど、その美容部員が、「こちらの新しい美容液には、アイトラッキング効果がありまして、お肌をキレイに見せることができます」って。」
私 「???アイトラッキング効果?美容液で?意味分からんな~。」
妻 「そうなんよ。一応、もらってきたパンフレットも隅々までチェックしたけど、どこにもアイトラッキング効果なんて書いてないし。ホームページも見てみたけど、書いてない。」
私 「じゃあ、その美容部員が適当な事言ってたんじゃないの?」
妻 「いや、そんなことないよ。他の人も言われてた。」
さて、ここに出てくるアイトラッキング効果とは何のことでしょうか?
アイトラッキングとは?
この会話に出てくるアイトラッキングとは、英語でEye Trackingと書きます。
Eyeは、目。
Trackingは、追跡という意味です。
直訳すると、「目を追跡する」ということになります。
アイトラッキングとは、webサイトのユーザビリティ(利便性)やさまざまな効果を向上させるために使われる手法で、閲覧者の目線の追跡による心理分析手法を言います。
例えば、webサイトを開いた時に一番最初に左上を見る人が多かったとします。すると、webサイトの左上は、みんなが一番最初に見る一番価値のある場所だと定義付けます。そして、左上に広告のバナーを配置したり、閲覧者に一番伝えたい情報を掲載したりして、webサイトを改善していきます。
つまり、webサイトや店舗の動線などをより効果的なデザインや配置を構築するために使われる手法の一つです。
美容液のアイトラッキング効果とは?
一般的なアイトラッキングは先ほど説明した通りですが、美容液のアイトラッキング効果とは、初耳です。自分の不勉強を恥じ、屈辱にまみれながら、Google先生のお世話(検索をする)になりました。
「アイトラッキング効果とは」「アイトラッキング効果 美容液」で検索してみると、それらしいものは出てきません。なんと、Google先生でも知らないことらしいのです!ということは、つまり、「世の中にそんな効果は存在しない」と同義だと言えます。(もし、誰か知っていたら教えてください。よろしくお願いします。)
強引に、ですが・・・
美容液によるアイトラッキング効果なるものを想像力を総動員して考えてみると、美容液を塗ると、自分を見た相手の目線を追跡できるようになるということでしょうか。ん~、意味不明ですね。
その後、ついでの時に、その化粧品メーカーにもう一度、話を聞きに行ってもらったところ・・・
「顔の色味をキレイに見せる補正効果のことを、アイトラッキング効果を呼んでおります。」という説明だったそうです。
「アイトラッキング効果ってそういう意味じゃないですよね?」と尋ねた妻に対し、美容部員は、「一般的には違うのかもしれませんが、当社ではそう定義しております」とのこと。
クレーマーばりに「それって誤解を与えませんか?」や「カタログに書いていないのは、薬事法違反だからです?」と詰め寄る妻に、美容部員はにっこり笑顔のスルーでかわしたそうです。
その化粧品メーカー全体で指導してるのか、その店舗内だけなのか、店舗の中でも限られた美容部員だけなのか、詳細は分かりませんが、なんともお粗末な話です。適当なそれっぽい言葉を使って、自社の化粧品を誇張する。
正しい化粧品の知識を学んで、それをお客さんに分かりやすく伝えるのが美容部員の最低限の仕事だと思います。知らないことがあるのは、仕方がありません。後からでも調べて答えれば、まあ許されると思います。
しかし、意味不明な言葉でお客さんを惑わすのは恥ずべきことではないでしょうか。
実は、よく分かっていない美容部員って結構います
昔、勉強のために、いろいろな化粧品売り場をウロウロしていた時期がありました。それこそ商店街にある化粧品屋さんから、メーカー直販店舗、百貨店など。面白そうなキャッチコピーや化粧品の効果が目につくと、片っ端から質問していました。お店からしたら、迷惑な話だったと思います。なにより、それ以上に怪しかったと思います。
で、そんな怪しい私に一番親切に答えてくれたのは、百貨店の美容部員の方々でした。非常に親切だったのですが、肝心の中身は???な事が多かったです。
例えば、ある日焼け止めを販売しているメーカーの美容部員が、安全性の高さを主張していました。原料を見てみると、『紫外線吸収剤』を使っていました。紫外線吸収剤は、紫外線をカットする効果は高いものの、少なからず肌への刺激があります。
私はかなりの敏感肌ですから、紫外線吸収剤はほぼ使えません。赤くなり、腫れあがり、大変なことになってしまいます。だから、私は肌への刺激が少ない、紫外線散乱剤を採用し、使っています。
その時も、「安全性なら紫外線吸収剤より、紫外線散乱剤のほうがいいと思うんですが、なぜ、この商品は紫外線吸収剤を配合してあるんですか?」と質問すると、「少々お待ちください」と言って、辞書のようなマニュアルを持ってきて、ペラペラとめくっていました。
結局、「すみません、ここでは分かりかねます」ということだったので、「いえ、それならいいですよ~。お手数をお掛けしてすみませんでした~」と、帰ってきました。
また、「このブランドは、無添加で天然成分のみで作られています」と言われたので、中身を見てみて「ここに書かれている◯◯という成分は、天然由来成分じゃありませんよ」と言うと、「そんなことはありません。この商品に配合されている成分はすべて天然成分です。化学的なものは使っていません!」とゴリ押しされたこともありました。
たぶん、この人は天然由来成分と天然成分の違いも分からない人だったので、「そうですか~」と言ってフェイドアウトしました。
天然成分だけで作られる化粧品は、世の中にほとんど存在しましせん。一部、100%スクワランなどは、100%天然成分と言えますが、化粧品かどうかというと非常に微妙です。
もし、高機能な化粧品が天然成分だけで作られているとしたら、恐ろしく高額になるでしょうね。
それに食べ物同様に、自然のものは防腐効果も低いので、すぐに腐ります。製造から手元に届いてからはもちろん、使用中の保管方法など、普通のようには使えません。とてもじゃありませんが、日常的に使うことはできないと言えます。
また、「天然由来成分は安全で、化学の力で作られた成分は危険だ」と、主張するのもおかしな話です。天然由来成分とは、読んで字のごとく、自然界に存在する成分です。通常は、化粧品に使う原料の多くは、バイオ技術を使っています。自然界に存在するものから抽出する以外に、多くの原料は化学の力で作っているのです。そのおかげで、安価で安定した原料が供給されます。
つまり、天然由来成分の中には、化学の力で作られたものがたくさん混じっています。
さらに言うなら、自然界に存在するものが、すべての人にとって安全なものではありません。アレルギーを起こすものだって自然界にはありますよね。逆に、自然界に存在しないものでも安全なものはたくさんあります。
だから、天然由来成分が安全だと画一的に主張することも、おかしな話なのです。
と、こんな風に、当時、そんなに化粧品に詳しくない私でも「おかしい」と感じることがたくさんありました。これは、非常にもったいない話です。
せっかく高級感もあり、落ち着いた雰囲気、広いスペース、たっぷり説明できる時間、豊富な人員、とお客さんに満足してもらえる要素がたっぷり揃っているのに、説明内容がイマイチとは・・・。
全員がそうだとは思いませんが、せめて自社商品について正しく、詳しく説明して欲しいと思います。
とは言え、美容部員の人たちに頼ってばかりではいけません。自分で努力することも必要です。
私が美容業界に入った時には、インターネットが無かったので、化粧品売り場をウロウロするしかありませんでしたが、今は携帯でちょっとした時間にも調べることができます。せっかくこんな便利な良い時代になったのですから、ちょこっとした時間でも、有効に使いましょう。
その小さな積み重ねが、あなたを悩ます肌トラブルを改善する近道になります。
投稿日:2014.10.08