カネボウ、白斑被害責任なしと主張しているが・・・

カネボウの美白化粧品による白斑問題で、被害者から損害賠償を求められています。(白斑問題については『美白化粧品の白斑問題から学ぶべきこと』を参照ください)

それに対して、カネボウは、「化粧品開発時に白斑被害は予想できず、賠償責任は負わない」と反論しました。

白斑被害に悩んでいる方が、この記事を読んだら、気分を害するのではないでしょうか。
「責任をとって欲しい」
「元の肌に戻して欲しい」
そんな気持ちでおられることでしょう。

しかし、私は責任という部分に関しては、カネボウの主張は仕方がないと思っています。どういうことかというと、カネボウが白斑被害のリスクを承知で美白化粧品を開発していたなら、当然、賠償責任を負う必要があります。

でも、肌トラブルに悩んでいる人を苦しめるようなことを考えて化粧品を開発する人は、この世に一人もいないと思います。(たぶん・・・)
だから、ここを焦点にすることは、難しいと思います。

それに、もし賠償責任が認められたら、化粧品メーカーにとっては恐怖です。たまたま問題となる原料を配合していて、たまたま肌トラブルになって、その結果、賠償責任が発生。こうなると、小さな化粧品メーカーは、軒並み倒産するでしょう。ちなみに、カネボウのような大きな会社はまったく問題なかったみたいです。(カネボウの親会社・花王の2013年12月期の連結決算については『美白化粧品による白斑問題で97億円も損したけれど・・・』こちら)

ここら辺に関しては、使う側自身が知識を高めて、使う・使わないを決める必要があると思います。特に美白化粧品に関しては、慎重に選んでいただきたいと思います。

日本では、1980年代に化粧品原料であるアルブチンやコウジ酸ができたことによって、化粧品業界に確固たる『美白化粧品』の地位が築かれました。美白化粧品と呼ばれるためには、厚生労働省に認められた『美白有効成分』を配合する必要があります。簡単に言えば、通常の化粧品であっても、下記にある美白有効成分を配合し、許可をもらえば、『美白化粧品』になります。

<美白有効成分>
アルブチン、アンダーシールダー、安定型ビタミンC誘導体、エナジーシグナルAMP、エラグ酸、カモミラET、グラブリジン、コウジ酸、トラネキサム酸、ニコチン酸アミド、ハイドロキノン、ビタミンC、ビタミンCエチル、ビタミンC誘導体、白蓮果RHA、プラセンタエキス、マグノリグナン、4MSK、リノール酸S、ルシノール

ここからは美白化粧品の働きについて、見てみましょう。美白化粧品のことを、『肌を白くする』もしくは、『シミを消す』化粧品だと思っている方が多くいらっしゃいます。

しかし、美白化粧品でシミは消えません。今あるシミ対策としては、何の効果もありません。どれだけ美白化粧品を使ってもシミの数は減らないし、1mmも小さくなりませんし、薄くもなりません。では、美白化粧品はどういった効果効能で『美白』を実現するのでしょうか?

シミの正体は、メラニン色素です。何らかの理由で肌の内部にメラニン色素が多量に残っている、もしくは、多量に作られ続けていて、それが常に見えている状態がシミです。ですから、『メラニン色素が作られなくなれば、肌の内部に残っている大量のメラニン色素も段々と減っていって、いつかはシミが無くなるのでは?』という考えの下に作られたのが美白化粧品です。

具体的に言うと、二つの働きがあります。

美白化粧品の働き1
メラニン色素の生成を抑える

一つ目は、美白有効成分が、メラニンの生成に重要なチロシナーゼと呼ばれる酵素に働きかけて、メラニン色素の生成を抑えるものです。だから、雑誌の広告やCMなどでも、シミが消えて肌が白くなるイメージを受けますが、紙面やテレビ画面の片隅に※マークの注釈が表示されています。そして、そこにはこう書かれています。
「※美白効果とは、メラニンの生成を抑えて、シミやそばかすを防ぐことです」
つまり、あくまでも今後、シミのできる可能性を減らすものだというわけです。

美白化粧品の働き2
メラニン色素を漂白する

二つ目は、美白成分の中には、「メラニン色素を漂白(脱色)する」働きを持つものもあります。メラニン色素は肌に点在しており、通常は、無色です。紫外線を浴びたとき、紫外線を吸収するため、黒褐色に変化します。この黒褐色化したメラニン色素の色を抜き、シミに見えないようにしてしまおう、というものです。だから、使うとシミが無くなったように見えるかもしれません。

しかし、よく考えてみてください。紫外線を浴びたら、また、メラニン色素は黒くなります。メラニン色素も多量につくられたままです。

すると・・・美白化粧品で脱色する。でも、また紫外線を浴びると黒くなる・・・の繰り返しを延々と続けるわけです。

つまり、肌を白くするのではなく、使用している間は黒いメラニン色素の量を減らすことで、肌全体の色を薄く見せるものというわけです。

これって、根本的なシミ対策と言えるのでしょうか?美白化粧品は、シミを無くすものではない。使用を続けることで、日焼けした肌の色を戻すことはできるが、使用を止めるとまた黒くなってくる。これが美白化粧品の正しい効果です。

美白化粧品を使うと
肌の老化が進む?

また、もう一つ大きな問題があります。『メラニン色素の生成を抑える』という効果についてです。本当に、メラニン色素の生成を抑えてしまってもいいのでしょうか?そもそも、メラニン色素が生成される理由は、紫外線から私たちの身体を守るためです。メラノサイトがメラニン色素を作り出し、肌のあちこちに点在させます。そして、オゾン層を突破してきた有害な紫外線を肌に受けた際、メラニン色素がそれを吸収します。

だから、肌内部の遺伝子や細胞が傷つきません。私たちが紫外線を浴びても健康でいられるのは、こうした働きをしてくれるメラニン色素のおかげと言っても過言ではないのです。その大切なメラニン色素の生成を抑制すると、どうなってしまうのか?

まず紫外線のダメージが体内までダイレクトに届きます。体内まで届いた紫外線は、たんぱく質を変性させ、コラーゲン線維にダメージを与えます。その結果、シミだけではなく、シワもできやすくなり、皮膚の老化を促進させます。

紫外線には、UV-A波・UV-B波・UV-C波の3種類があります。これらは波長の長短で識別されます。UV-A波は、日焼けなどの炎症を起こさず、危険性そのものは小さいのですが、肌の奥深くまで浸透して、肌の老化促進、DNAへのダメージ、皮膚がんなどのリスクを招きます。UV-B波、UV-C波は、DNAを不安定にして、螺旋構造を破壊します。その結果、DNA配列を乱したり、複製の中断やミスなどを発生させます。このため正常に遺伝子が機能しなくなった場合、皮膚がんなどの突然変異を引き起こします。

つまり、メラニン色素を抑制することで、肌の老化が進み、最悪、皮膚がんの発症リスクが高まります。いくらシミが薄くなったとしても、シワや炎症だらけの顔になり、がんまで発症しては、本末転倒です。特に、肌の弱い方や色が白い方は要注意です。メラニン色素を抑制することで、肌トラブルが起きる可能性が一般の方と比べて格段に上がります。

こうしたことをご存じない方が非常に多くいらっしゃいます。「最新の美白成分」とか「新成分」と聞くと使いたくなる気持ちはよくわかります。悩んでいる方にとっては、非常に魅力的です。「一時的な効果でもいいから」と使う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、10年後20年後の肌のためにも、美白化粧品の選び方・使用は慎重にする必要があることは知っておいていただきたいと思います。

本題に戻りましょう。今回の賠償責任については、おそらく退けられると思うのですが、これからの動向に注目していきたいと思います。

それにしても、テレビでは、この類のニュースをあまりやりませんね。
私があまりテレビを見てないだけなのかな?もしくは、花王がたくさんのCMスポンサーだからかな?

尚、法律の専門家ではないため、間違っていたらすいません。このブログに書いてある内容は、井上個人の独断と偏見に満ちています。

投稿日:2014.02.25

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アースケア代表・化粧品開発者

井上龍弥

2000年アースケアを創業。保湿に特化したアクシリオの開発・販売を手掛ける。起業家ならではの人生観や自身の超がつく敏感肌・乾燥肌の経験談が愛用者に人気。

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