数年前から、化粧品の効果の一つに『ブースター効果』という言葉を聞くようになりました。
『ブースター』とは、通常よりも圧力や出力を加えて増幅することで、さらなるパワーを発生させる装置や機械のことを言います。
初めて耳にした時、私は『ブースター効果』の意味が分かりませんでした。
機械や装置の効果???
何のことやら意味不明です。
化粧品のブースター効果とは?
よくよく調べてみると、『ブースター効果』とは、「後に使う化粧品の成分を浸透しやすくする効果」のことを言うようです。
装置や機械とは何の関係もありません。
効果のことを言うなら、『ブースター』ではなく、正しくは『ブースト』です。
『ブースト』は、増幅効果そのもののことを言います。
まぁ、どちらにせよ、本来使われている意味とはかけ離れているんですけどね。
このように本来の意味とかけ離れた言葉が化粧品業界で使われると、あやしい匂いがプンプンします。
こういう時は決まって、業界内では当たり前の大したこと無いことを、ものすごいことのように表現するだましが目的として作られるからです。
じっくり見てみましょう!
あやしさいっぱいブースター化粧品の効果!
今回のブースター効果を調べてみると、いかにもあやしさがいっぱいです。
まず、ブースター効果があるとされる化粧品の種類が、多岐にわたっています。
『乳液』もあれば、『美容液』もあり、『導入液』という新たな分類まであります。
ブースター効果の根拠を調べてみると、やはり、化粧品メーカーによってマチマチでした・・・。
一番ポピュラーなブースター効果は、「保湿をすることで、肌の浸透力がグングン上がる」らしいです。
コラーゲンやヒアルロン酸など、メーカーによって推している保湿成分は違うものの、だいたいこんな感じです。
配合されている成分や化粧品の中身を見ても、今までに山ほど出ている普通の化粧品です。
ただ、商品の説明文に、「保湿成分によってブースター効果が発揮されます。そのため、あとに使う化粧品の美容成分が浸透しやすくなります。」と書かれているだけです。
何か、今までにない技術や成分を使ってるわけではありません。
ただ、ブースター効果があると言ってるだけです。
ブースター効果は、本当なのか?
ブースターを売りにしている化粧品の謳い文句の中には、「成分がぐんぐん吸収する」なんて書いてあるものも。
しかし、化粧品は肌に『吸収』されません。
『吸収』とは、皮膚表面から真皮や血管にまで達し、全身に行きわたることです。
化粧品がそんなことになったら、えらいことになります。
皮膚は、外部からの異物の侵入を防ぐ働きをしています。
いわゆる、バリア機能(防御機能)です。
肌にグングン吸収させるためには、その防御機能を破壊する必要があります。
残念ながら、化粧品にそんな威力はありませんですから、吸収することはありえないのです。
それに、もし、そんな化粧品が開発されたら、とてもじゃありませんが認可が下りないでしょう。危なくて仕方がありませんから。
化粧品の場合、皮膚への作用は、正しくは、『浸透』です。
皮膚表面の一番外側である角質層にいきわたることを『浸透』と言います。
まぁ~、これまでの文脈でわかると思いますが、保湿成分の入った化粧品を使っても、その後に使うアイテムの美容成分がグングン浸透するわけではありません。
保湿成分によっての浸透力の違いなんて、さほどありません。
わずか、サランラップ程度の厚みしかない皮膚ですから、当然、浸透するにも限界がすぐにきます。
全体に行きわたれば、それで終わりです。
別のブースター効果の説明には、「角質層の奥の奥まで浸透する」なんて書いてあるものもありましたが、角質層の奥は、バリア機能である顆粒層があります。
ですから、「奥の奥まで」なんて浸透しません。
強いていうなら、水溶性の成分よりも、油溶性の成分が浸透しやすいです。サラダ油が手についたとき、水洗いしてもなかなか落ちませんよね。
あれです。
油分は皮膚になじみやすいのです。
だから、美容液のような、油分が多く配合されている化粧品を皮膚に塗ると、化粧水を塗った時よりも、しっとり感を感じやすいです。
もしかすると、その作用を『ブースター効果』と呼んでいるのかもしれません・・・。
結論:ブースター効果とは・・・
結局、「ブースター効果がある」と言っているだけで、中身は普通の化粧品でした。
次に使う化粧品の成分の浸透を高める特別な作用はなさそうです。
「私はブースターの効果を感じた!」
という方もいらっしゃることと思います。
もし、あなたが乾燥肌や敏感肌であったなら、その実感は当然のことです。
乾燥した肌や過敏な状態の肌というのは、角質層を形成している『角質細胞』が未熟な状態で成り立っています。
未熟であるがゆえに、細胞自体も小さく縮こまっています。
そのために、水分や保湿成分を与えても、非常に浸透しづらくなっています。
そんな状態の肌に、肌なじみのよい油分が多いものを塗ったら、水分を塗った時とは違うしっとりとした浸透感を感じることでしょう。
それは、期待されている『ブースター』の効果とは別のものだと言えます。
何度かお話してきましたが、乾燥肌や敏感肌を改善するためには、皮膚に水分を維持し続けることが重要です。
そもそも、乾燥肌や敏感肌の人は水分自体が少ないのですから、油分でフタをしてしまっては、乾燥を改善することができません。
ですから、乾燥肌や敏感肌の方は、ブースター化粧品を使うより先に、正しい保湿をする方法をおすすめします。
正しい保湿の方法については、今すぐこちらをクリック。
更新日:2018.05.26投稿日:2014.09.10